かあ~ちゃん、なぜ泣くの?カラスは山に
生まれて間もないころ、ポリオ(小児まひ)にかかり、右足が動かなくなった。当時、子育てのために看護婦を休職中の母が、それに気付き、新潟大学付属病院で手術を受けた。
幸いにも軽度だったので、少し後遺症はあるものの、ちゃんと歩けるようになった。かすかな記憶だが、足が成長してギブスが合わなくなると電気ノコギリで切って外すのだった。その恐怖感だけは今も消えない。
やがて、近所の子と同じように小学校の入学式を迎えることができた。その日、母は泣いていた。「かあ~ちゃん、なぜ泣くの?」わが子が普通の学校に通える親の喜びなど、子供の私には分からなかった。
今思えば、歩けるだけでも感謝しなければならないのに、少し足が悪いということを理由に、運動はだめだと決めつけていた。もっと足が悪くなり、みんなに同情されたいと思ったこともある。運動会のかけっこでは、私より背の小さい子と走っても、いつもビリだった。
ある年の運動会の日、私はついに学校を休んだ。そして母は泣いていた。「かあ~ちゃん、なぜ泣くの?」母は私の何倍も足のことをを気にしていたのだ。
運動会の前には、みんなが走る練習をしていた。私はハンディを感じて、夜に一人走った。だが、一人で走ったところで、基本的にはダメだと思っていたので、大した成果は上がらなかった。
それから数年後の運動会のかけっこで、初めて三等になり、リボンをもらった。もう担任ではなかったが、入学してから三年間お世話になった渡辺先生という女の先生に真っ先にリボンを見せに行った。
先生は本当に喜んでくださった。今だから話せることだが、かけっこの時、先生は私を私より背の小さいグループに内緒で入れてくれていたのだ。
それまで、私はスタートのピストル音が鳴ったと同時に、あごが上がり、投げやりに走っていた。しかし、この日はしっかりと地面を見つめて、あごを引いて走ったのだ。
この成功は、私の人生で最高のヒントになっている。
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