Nature Boy の思い出
小林桂のニューアルバム「Nature Boy」が発売され、ファンの間ではそのCDの話題で持ちきりだ。
偶然ではあるが私も今の息子と同じ24歳の時に「Nature Boy」で忘れられない思い出がある。
その当時、私は毎晩、歌舞伎町のピアノバーでピアノを弾き、週末には、家内が歌いに来ていた。(その時お腹の中には桂がいた)
ある日、アラブ系の顔をした男の客が来て、やけに私のピアノを気にいってくれた。(私のピアノといってもピアノは当然店のもので、この時期私はアパ-トにピアノがなかった)
その男、なんでも石油関係の仕事で日本に来ているらしかった。
それから毎晩のようにやって来ては盛り上がっていた。そのうち、やはりアラブ顔(あぶら顔でもあった)の社長を連れて来て「マイ・ボス」とかいって社長の肩をたたいて、まるで友達同士のような雰囲気で飲んでいた。
ここが日本と違うところであり、仕事が終わった後は社長も社員も、上司も部下もないのだ。
また、ある日ピアノカウンターに座った彼の隣にある日本の若者が座り意気投合し、若者は飲み過ぎてダウンしてしまった。アラブ人は若者を一生懸命介抱していたが一緒に来ていた同僚のイギリス人は知らん顔して先に帰ってしまった。
やっぱりイギリス人はそいういう醜態を許せないようだった。
彼と話すうち、遠い故郷に残してきた家族が懐かしいと語っていたのが印象的だ。
そんな、ある夜、私の伴奏で家内が歌う「Nature Boy」をカウンターで聴いていた彼は目にいっぱい涙を浮かべて帰っていった。その後ろ姿を私は忘れられない。
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