ピアノの椅子
ピアノの椅子の高さは演奏者によって違いがある。
最近読んだクラシック・ピアノ奏法の本で低い位置に座る利点が書かれていたが私の大好きなエロル・ガーナーというジャズ・ピアニストは椅子の上に更に電話帳を置いて高くして演奏していた。
映像を見るとほとんど立ってピアノを弾いてる感じでゴッツイ指が鍵盤に向かって垂直に突き刺さるような弾き方なのだが素晴らしい音なのである。
また、あるピアノレッスンのテレビ番組で中村紘子さんは生徒に椅子を高くしてオーケストラに負けない大きな音を出すよう指示していた。
私は正式にクラシックピアノを習った事がないのでピアノを弾くというよりは叩いているようなものだが、昔ピアノの椅子の高さを一番高くして弾いていた時期がある。
あるお店で私が出演した翌日来たピアニストが椅子の高さを見て「昨日は小林洋さんだったでしょう」と言ったという話を聞いたこともある。
前述の本を読んだ訳ではないのだがここ数年は一番低くして弾いている。これといった理由はないのだが自分にとって無理な力が入らなくて良い感じがするのである。低くすることにより必然的に背筋を伸ばす姿勢になるのかもしれない。
コンサート等で一台のピアノを複数のピアニストで使う場合、椅子の高さを高くして弾く人もいれば現在の私のように一番低くして弾く人もいるので各々弾くときにセッティングを変えることになる。
私が弾いている店に遊びに来た仲間の女性ピアニストが数曲弾く事になった。その当時、私は椅子を一番高くして弾いていたのだが彼女は一番低くして弾く人だったので「椅子を下げていいですか。私、椅子低いんです。」といってセッティングしていた。私よりも先輩ピアニストなのに礼儀正しい人だと感じた。
また、あるコンサートで前半を担当する私のバンドが先にリハーサルをした後、後半を担当するバンドがリハーサルをして本番は再び私のバンドからスタートする機会があった。
これまた同様に私は椅子が高く、後半担当のバンドの友人であるピアニストは椅子が低かったのである。彼も本番前に私のところにやってきて「ピアノの椅子低くしたままでゴメン」といっていた。私のピアノでもないのに本当に礼儀正しい人達だ。
椅子を低くしている最近、大きなコンサートで私達が先にリハーサルをした後、ビッグバンドがリハーサルして本番は私達からスタートという流れでビッグバンドの先輩ピアニストから私宛に「ピアノの椅子を少し高くしたままですみません」というメッセージがスタッフを通じて届いた。
私も同じ立場になる事がよくあるので極力椅子の高さを戻すように心がけている。たかが椅子の高さの話であるが他人のセッティングを変えるわけだからマナーであるしピアノを道具と捉えるか自分の心を表現してくれる大切な楽器と捉えるかの違いといっても過言ではない。
クラシック・ピアノを長年習って音大を出たような人でも以外に無神経な人の多いこと。しかし、この様な話は説教じみてとられたらバカバカしいので生徒や若いミュージシャンにもしないことにしている。要するにデリカシーの問題なのだ。
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